第1回
日本の人口減少──2050年には5割の自治体が消滅する?

労働人口の減少と高齢化

日本の人口推移(2005年-2050年)
日本の人口推移(2005年-2050年)

(国立社会保障・人口問題研究所)

 ご存じのように、2011年から日本の人口は減少局面に入っています。様々なデータがありますが、2050年ごろには1億人を切って9000万人台になっていくだろうとされています。

 そこで問題となるのは、いわゆる「労働人口」と言われる15歳から64歳が減少する一方で、高齢者が増えていくことです。現在、労働人口は高齢者の倍以上ですが、それが2050年になると接近してしまいます。

人口ピラミッドの変化

人口ピラミッドの変化

(内閣官房)

崩壊する年金制度、国の政策の限界

 これは誰もが憂慮すべき事態ですが、人間は心配事を避けて生きていますから、今の繁栄があるわけです。
そこで、私が危ないと思っているのは2050年ではなくて、もっと前、2030年くらいからではないかと。2030年から人口減少と高齢化がかなりの速度で進行していきます。12年後ですね。ですから、遠からずして、日本の人口構造は相当変化することになる。これに対して、どう対処すればいいか。

 日本の年金制度は賦課方式ですから、現役世代が納める保険料をもとに引退した世代に支給されています。
今払っている世代はいずれ支給されることを期待して保険料を納めているわけですが、すぐに分かることは、年金はこれまで納付額の2倍、3倍の額が支給されていましたが、現在の若者たちが引退する頃には支給額はおそらく同額か、それ以下になるかもしれない。
2035年のグラフを見れば、年金制度自体が崩壊していることは明らかなわけで、国は何をしているかというと、実は継ぎはぎ的に政策を修正し続けています。これが実態です。

 民間の有識者で構成される日本創成会議が2014年に、2040年におよそ5割の自治体が消滅し始めると発表して大騒ぎになりました。
また、国土交通省も2050年に60%の自治体が人口半減と試算しています。

半減の先は、消滅の危機です。
それでは、どこが消滅するのか。首都圏や中部圏、関西圏は残りますけど、あとは中枢・中核都市周辺を除くとほとんど海沿いしか残らない。
これがおそらく20年後以降の日本の状況です。

人口減少の続く自治体

  • 2040年(日本創生会議)
    現在の市区町村 約1,800
    ⇒896が消滅の危機
    ⇒そのうち523が人口1万人割れ
  •  
  • 2050年(国土交通省)
    全国18万地点(1㎢単位)のうち
    ⇒60%の地点が人口半減
    ⇒20%の地点が消滅

若返る地方、高齢化する東京

 日本には困ったと言いながら何もしないという独特のパターンがありますが、少子化を克服したフランスにいくつか学べる点があります。
結婚の形態を変えるとか、男性の産休制度とか、様々な制度を見直せば、実は子供は増える可能性はある。
ですから、制度と人々の意識が変われば、少子高齢化という状況は変わりますが、そうではなく放っておけば、2060年代には人口が8500万人まで下がってしまうということは分かっています。

地域別高齢化率の推移

地域別高齢化率の推移

(内閣府、まち・ひと・しごと「長期ビジョン」2015年1月)

 地域別に見ていくと、地方は若返り、東京は高齢者が増えてきます。これは当然で、大都市ほど長生きできます。
大都市では、医療体制が非常に整っています。また、移動が楽で、バリアフリー化も進んでいます。そして、日々の暮らしに刺激があります。
ですから、高齢者にとっては、大都市が一番いい。自然の中で暮らすことが非常に重要だと思われていますが、現実のデータからいうと、実はそうではなくて、東京が最も高齢化率が高くなってくるという推計もあるのです。

プロフィール

日本の人口推移(2005年-2050年)

市川宏雄(いちかわ ひろお)
明治大学名誉教授
帝京大学特任教授、中部大学客員教授

 1947年東京に生まれ育つ。早稲田大学理工学部建築学科、同修士課程、博士課程を経て、カナダ政府留学生として、ウォータールー大学大学院博士課程(専門は都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士でもある。
 ODAのシンクタンク (財)国際開発センターなどを経て、富士総合研究所主席研究員の後、1997年明治大学政治経済学部教授(都市政策)。都市計画出身でありながら、政治学科で都市政策の講座を担当するという、日本では珍しい学際分野の実践者。2004年から2018年3月まで明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科長。2008年から2016年まで明治大学専門職大学院長、明治大学危機管理研究センター所長も務める。現在、日本自治体危機管理学会会長、森記念財団業務担当理事、町田市・未来づくり研究所所長、日本危機管理士機構理事長等、要職多数。Program Committee Member of Innovative City Forum, Steering Board 海外ではCheering Board Member of Future of Urban Development and Services Committee, World Economic Forum(ダボス会議)。

専門とする政策テーマ:
大都市政策(都心、都市圏)、次世代構想、災害と危機管理、世界都市ランキング、テレワーク