相続・事業承継対策に有効な不動産の条件とは
~対策前後でこんなに違う 実務家税理士が語る現場の実例~

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目次

相続・事業承継対策で不動産が活用されることは昔からありました。しかし、不動産は高額かつ大事な資産。一時的な対策ではなく、長きにわたって最大限のリターンを引き出し、残された関係者がより多くの利益を享受できる方法を選択することが大切です。経営サポートや相続支援で実績のある瀬尾税理士事務所所長の瀬尾暁史氏が、相続・事業承継対策に有効な不動産活用について、プロの目線から解説します。

相続対策の進め方

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相続対策では、手順どおりに進めることが一つのポイントとなります。
まず「相続」を「争続」にしないために、遺産を仲良く分け合うための財産の持ち方を考えることが重要です。
次に納税資金の確保。たとえ1億円の納税が必要だという家であっても、キャッシュが10億円あれば問題はありません。しかし1,000万円の納税をしなければいけない人が、200、300万しか手持ちがないとなると大変です。納税額ではなく、納税資金に注目して対策を練っていきましょう。そのうえで相続税の有効な優遇措置の活用法を考えます。

つまり関係者の皆さんが納得して遺産を分割し、納税資金がどれくらいかを確認して、そして納税額について検討するという流れで進めていきます。

ここで相続税の仕組みについて触れていきます。相続税は、故人が所有していた財産などから債務、葬式費用や3年以内に贈与された財産などを加味して算出される「課税価格の合計額」から、基礎控除を引いた残り、つまり「課税遺産総額」に対してかかることになります。

基本的な相続対策のポイントとしては、課税価格の合計額を下げる、もしくは基礎控除を増やすということになります。さらには税額控除として適用できるものは適用し、この組み合わせで納付税額を下げていきます。

そのための具体的な対策として「時価と評価額の差が大きいものへの投資」「生命保険の活用」「贈与」「非課税財産の生前購入」があります。ただし、これらにはメリット・デメリットがあり、すべての状況に効果的というものはありません。それぞれの事例にあった対策を考えていくことが重要です。

相続対策の提案事例(「Vシェア」の活用)

相続対策として、これまで実際に私が提案した事例を紹介しましょう。

ご相談いただいたのは80代半ばの奥様で、会社を経営されていたご主人はすでに亡くなられていました。その資産を相続することによって、奥様にも財産が入ってきました。この奥様の推定相続人は3人の息子様たちです。息子様たちにも2人ずつ、計6名のお孫様がいらっしゃいました。

試算時の所有財産は約8億円。不動産が約6,000万円、預貯金が約1億5,000万円、上場株式が約1億4,000万円、そのほかにお孫様を被保険者とした養老保険の解約返戻金相当額が約5,000万円、そして非上場株式を約4億円お持ちでした。この時点での相続税の納税予想額は約2億6,000万円でした。

そこで、ボルテックスの「Vシェア」の購入を提案しました。その主たる目的は、金融資産から土地建物に振り替えることによって、資産の評価減が見込めるというものです。資産運用としても、預貯金で持つより利回りがよく、しかも売却時に利益を得る可能性もあります。さらにこの「Vシェア」は、ひとつのオフィスビルを1人が持つという形ではなく、小口化して販売し、賃料収入や売却益を投資額に応じて分配する商品ですので、資産の分割がしやすい。遺産分割には適した商品だといえます。

結局、この奥様は「Vシェア」で都心プライムエリアのビル1階部分を、8,000万円で購入しました。相続税評価額は576万円。8,000万円で購入したものが、576万円の評価に下がりました。年間予想収益は1年目が1.45%、2年以降は2.4%でしたので、通常の定期預金より高利回りです。

実際に節税効果のシミュレーションをしてみると、当初は約2億6,000万円だった予想相続税額が約2億3,000万円となり、3,000万円ほどの節税が可能となりました。さらに1年目から10年ほどのシミュレーションをしてみると、収入としては年々増えていき、10年後には2,600万円ほど見込めます。

この方は購入してから3年目に息子様など8名に対し、「Vシェア」の持分を贈与されました。もともと約576万円の評価でしたので、1人当たりの贈与評価額は約72万円。これで110万円の基礎控除内となり、約3,000万円の節税効果が確定しました。

相続を受けた側は年間の不動産収入が入り、しかも建物には減価償却がありますから当面所得税の申告が不要。相続対策としては、皆様にとって有効なものとなったと思います。

事業承継対策(株価引き下げ対策)

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続いて事業承継対策(株価の引き下げ対策)についてお話しします。

同族会社は、原則的に会社の総資産価格、従業員数、取引金額によって大会社・中会社・小会社のいずれかに区分されます。さらに原則的には、大会社は類似業種比準方式、小会社は純資産価額方式、中会社はその両方を併用するという形で株式の評価が行われますが、大会社でも純資産価額の方が少なければそちらを採用してもいいですし、小会社では類似業種比準価額の方が小さい場合には、純資産価格と半分ずつの価格で評価してもよいです。中会社ではその規模に応じて、類似業種比準価格と純資産価格の割合を決めることで算定します。

非上場企業の株価はこのような方法で原則的な評価をされますが、株式や土地などの特定の資産の保有割合が著しく高い会社や、営業状態などが一般の会社と異なる会社は「特定の評価会社」と判断され、会社の規模にかかわらず、株式発行会社の態様に応じた評価方法が定められています。そしてその評価額は一般的に高くなる傾向が強いため、事業承継の相続税も高くなってしまいます。

つまり同族会社の相続対策では、特定の評価会社に該当させないことが重要です。さらに小会社、中会社では、純資産価額を下げる工夫をすること。そして小会社よりも大会社の方向を目指し、可能であれば規模の拡大を図ること。その結果、株価を下げることができれば、その時点で思い切った決断をして贈与などをすること。加えて株の移動時期の狙いを定めて、計画的に決算を組んでいくことが求められます。

事業承継対策の提案事例(「区分所有オフィス」)

では実際に、事業承継対策として私が提案した事例を紹介しましょう。ここでは「特定の評価会社には該当させないようにするために、大会社でありつづけること」ということを中心に対策を施しました。

この会社は、帳簿上の総資産額が20億5,000万円ほどありました。売上は約20〜21億円、従業員数は60名、一株あたりの配当金、利益がないことから、特定の評価会社となる「比準要素1の会社」に該当していました。さらに株式保有割合が49%ということで、こちらも特定の評価会社となる「株式等保有特定会社」に近い状態でした。

この状況から株式を評価すると、大会社であれば1,190円ですが、比準要素1の会社では12,259円、株式保有特定会社では13,810円と、大きな差が出ます。つまり特定の評価会社に該当させないことが重要で、そのために「総資産20億以上を確保すること」「所有株式評価額50%未満を維持すること」「利益をあげること」が必要でした。

そこで具体的な手法として、「区分所有オフィス」を提案しました。約5億6,000万円の賃貸不動産を購入することによって、帳簿上の資産は約26億円になり、1株あたり利益も1円は必ず確保でき、相続税法上の総資産価格が約40億円になったため、株式等保有割合を43%にまで下げることができます。これで大会社という評価に変えることが可能になりました。

この会社の場合には、資金繰りに余裕があったことと、株主の多くが高齢の親類だったことで、とてもスムーズに対策を実行できました。

不動産を利用した相続対策で「区分所有オフィス」を推す理由

最後に、不動産を利用した相続対策を行う際、私が「区分所有オフィス」の活用をおすすめする理由を紹介します。

不動産投資では空室や滞納の発生がリスクとしてあげられます。また将来的に売却を考える際、価格が下落していて利益が上げられない、売却までに時間がかかり必要なときに換金ができないことも懸念されます。これらは主に「そもそも不動産としての魅力がある物件だったのか」という、基本的な問題に由来しています。

区分所有オフィスは、好立地の物件を比較的低予算で取得できることが大きなメリットです。立地条件のよい不動産を低予算で保有できれば、安定した収入が見込めることになります。当然需要が高いところであれば売却までの時間も短縮でき、資金流動性からみても魅力があります。

さらには私たち税理士としての観点から節税メリットという面で大きいと思うのが、時価と相続税評価額の差が大きい点です。純資産価額を下げることができるのは、株価引き下げ対策としては非常に有効です。

以上の点から「Vシェア」と「区分所有オフィス」は、個人、法人を問わず、上手に活用していただきたい相続対策であるということがいえます。

※期待どおりの税務上の効果が得られない可能性があります。
※税制改正、その他税務的取り扱いの変更により効果が変動する場合があります。
※相続税の圧縮効果を含めた税務の取り扱いについては、個別具体的な事情に応じて適用が異なる可能性がありますので、税理士等の専門家にご相談ください。

瀬尾 暁史氏

監修者

瀬尾 暁史氏せお あきふみ

瀬尾税理士事務所 所長
税理士・行政書士・CFP

中央大学商学部卒業後、東京の公認会計士事務所にて勤務。赤坂の60億円を超える資産家の相続対策の補助を経験後、平成2年、地元尾道にて26歳の時に税理士登録、家業を継ぎ二代目税理士としての道を歩む。以来、地元企業経営者や資産家との信頼関係を第一に考え、お客様の身に立った税務サポートや提案を行い続ける。

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