いま世界が注目!! 東京の不動産

伊藤 洋一氏伊藤 洋一氏
[いとう よういち]
(株)三井住友トラスト基礎研究所研究主幹。金融市場からマクロ経済、特にデジタル経済を専門とする。「IT とカースト:インド・成長の秘密と苦悩」(日本経済新聞出版社)、「カウンターから日本が見える」(新潮新書)など著書多数。テレビ、ラジオでも活躍中。

伊藤 先般、ニューヨークを視察し、改めて痛感したことがあります。
トランプ氏はなぜ、大統領になれたのかというと、ニューヨークの不動産価格が下がりにくく、もっとも上がりやすいマーケットである事に関係しています。
トランプ氏は企業経営者として二回倒産を経験していますが、都度再生しえたのは、マンハッタンという地盤をベースに事業展開していたからです。
私はそういう土地が世界にいくつかあると思っています。例えば、ロンドンのテムズ川周辺とか、東京でいえば3A(赤坂、麻布、青山)です。
不動産の価値は5~6層構造になっていて、東京は最も価値の高い第1層に入る魅力的な都市だと見ています。

宮沢 確かに、歴史的推移から見ると、一極集中はどこの国でも起こっています。
それはある程度、成熟した国家の中で、一番大きな都市がさらに大きくなっていくというプロセスでもあります。
当社もニューヨークに物件を所有していますが、土地、建物への概念がすごく違いますよね。日本のように完全所有権を永代所有できる国は意外と世界中で少ない。
反面、開発が容易で、すぐに新しい建物に変わる。それが日本の良さにもなっています。

伊藤 日本には現在、年間約3000万人の観光客が訪れます。1週間に56万人も人口が増えている計算です。
人口減少が懸念されていますが、訪日客を考慮すれば異なる局面が見えてくる。
都市圏、とりわけ東京における不動産価格はさらに上昇するのではないでしょうか。

宮沢 経済合理性が鍵を握っていると思います。
例えば、企業家は、起業するとしたらどこでやると儲かるのか、どこで人材を採用するとうまくいくのかと考えます。
そうした経済合理性の営みの中で、自然と集約・集積が行われ、経済的な結びつきが大きい東京に本社を置けば選択肢が広がるということになります。

企業継続のカギは本業以外の収入源

株式会社ボルテックス 代表取締役社長 兼 CEO 宮沢 文彦氏株式会社ボルテックス
代表取締役社長 兼 CEO 宮沢 文彦氏

宮沢 こうした新興企業のみならず、東京は創業100年を超える「長寿企業」数も2874社と他の都道府県を圧倒しています。
2位の大阪府の2倍近い数なのですが、さらに興味深いことは、業種別では「貸事務所業」が1位を占めていることです。
世界の大企業が集まる東京においても貸事務所業の事業継続性の高さが如実に示されている証といえましょう。

伊藤 確かに、老舗企業の多くは、先祖伝来の不動産等の固定資産を持ち、本業の利益を支えていますね。
とくに本業で利益が上がる環境を維持する事が難しい中、本業以外の収入源としての賃料収入、これがあると強い。

宮沢 その通りです。保有する不動産を賃貸ビル等に有効活用し、そこから生じる収入が全体の収益を支える戦略は有効です。
ただし、同じ事業レベルでやっていても、東京と地方とでは、保有する不動産の価値に大きな差がある点は見逃せません。
不動産の最大の利点である運用の複利効果も圧倒的に希少性の高い東京が勝りますね。

伊藤 その点で言えば、トランプ氏の生い立ちが面白い。
トランプ氏の父親はクイーンズで低所得者用のアパートを作っていたのですが、彼はそれをみていて、俺は後を継がないとマンハッタンに出てきて、ホテルなど富裕層向け不動産ビジネスで大成功した。
まさに固定資産の複利効果を生かして大統領に昇りつめたと言っていい。

宮沢 当社が手掛けるのも、まさにオフィスビルのフロアを分譲取得できるようにする「区分所有オフィス」で、複利の運用効果を顧客に提供するビジネスモデルです。

不動産はリスクの少ない希少アセット

伊藤 リーマンショックからちょうど10年になりますが、この間、主要国の中央銀行による大量の資金供給もあり、経済も回復基調で、日米の不動産価格も上昇しました。
まさに個人レベルの運用においてもパート・オブ・アセットとして不動産を組み入れることは有効でしょう。

宮沢 長期の金融緩和に伴い大量の現金と国債が市場に供給され、貨幣価値の下落が懸念されています。
一方、大都市の不動産の所有権というのは物理的に増えにくい傾向にあります。需給バランスから言えば、従来はリスクアセットとして認識されていた不動産が、実はノンデフォルトアセットであり、供給量が限られる希少なアセットとして見直されています。
そのため、いま不動産市場には、年金資産等の長期運用を目的とした巨額な資金が流入しています。
このように、今後は超長期の運用を考える時、不動産は選択肢に必ず組み入れていきたいアセットと言えます。

伊藤 海外の投資家などは、この点に早くから着目して東京の不動産を購入する動きが見られますね。

宮沢 例えば、世界最大級の政府系ファンドであるノルウェー年金基金が昨年末に東京・渋谷区や港区の商業施設5物件を約1325億円で一括購入して話題をさらったのは記憶に新しい。
まさに希少な東京の不動産が外資に持っていかれている印象があります。
ノルウェー年金基金は、東京の不動産に着目した理由について、「グローバルなビジネスが集結し、長い目で市場の成長が期待できる」点を挙げていました。
同基金の東京市場における不動産取得額は、長期的には6000億〜9600億円に達する可能性も示されています。
世界の有力ファンドが注目する東京の不動産取引が一段と活発になる公算は大きいですね。

伊藤洋一氏×宮沢文彦