事業承継や事業継続、不動産事業、オフィス購入なら、
区分所有オフィスの【ボルテックス】

組織体系や人材育成から長寿企業を考える

組織体系や人材育成から長寿企業を考える

企業を存続させるうえで人材が欠かせないことは、ビジョンやミッションこそ企業の「心」でもお伝えしましたが、日本の長寿企業は社員一人ひとりを組織に不可欠なものとして捉え、自然に育成できる仕組みを構築してきました。そのため人材育成に強く、永きにわたり継続している企業が多いのです。では、なぜ日本の長寿企業は人材教育が上手くいくのでしょうか?
このページでは長寿企業の組織の特徴、それを支える人材育成の仕組みについて考察していきます。

一般的な企業の組織体系について

日本の企業では、「本部」「部」「課」「係」のように管理単位で分ける「ピラミッド組織」が一般的です。メリットとしては指揮系統へ素早く情報を共有できることですが、下層にいくほど伝達スピードが遅くなり、正確に伝わりにくいというデメリットがあります。そこで近年増えているのが「フラット組織」です。また、通常は機能や事業、地域などの基準をもとに組織を編成しますが、2つの基準を組み合わせて組織を編成する「マトリックス組織」という体系を採用する企業も増えつつあります。

ピラミッド組織
フラット組織
マトリックス型組織

長寿に至る企業の特徴

それぞれの組織体系にはメリット・デメリットが存在しますが、日本の長寿企業で圧倒的に多いのはピラミッド組織です。そして、日本の企業が人材教育に秀でている理由もそこにあります。

日本企業は、古くから親方から弟子へ技術を伝承する、いわゆる「OJT」という人材育成を行ってきました。上司から部下へ、先輩から後輩へ、業務の中で必要なスキルや考え方、さらには企業理念が伝わっていくのです。しかし、近年増えているフラット組織では、部下を育てる中間層が減り、OJTによる人材教育が困難になっているという実情があります。さらに非正規社員の増加、リストラや転職、企業内での関係性の変化などによって、日本企業を支えてきた組織学習の仕組みが揺らいでいるのです。

徒弟的システムをうまく活用する

長寿企業の多くは、「親方から弟子へ」という徒弟的な人材育成システムによって、人を主体とした組織を形成しているのです。新しく加わった従業員は、経験豊富な先輩や上司、経営者、そして顧客を教師に学習します。その中で徒弟的な関係が生まれ、業務の中で必要なスキルや考え方、さらには企業理念を自然に理解し、その企業を体現する従業員へと成長していきます。長寿企業には人の成長や育成、自立、キャリア形成をする仕組みが必要なのです。

徒弟的システムのプロセス

  1. 1

    規範と目的の提示

    最初は修行として簡単な仕事をしながら、先輩や上司の仕事を観察し、自分が会社の一員であることを認識します。

  2. 2

    上司からの個別指導

    上司が最適な課題を選び、個別指導によって業務を覚えます。失敗しながら学び、上司の仕事を間近で見ながら技術やノウハウを覚える、職人的な「見て覚える」段階とも言えます。

  3. 3

    独り立ちの案件づくり

    一定の業務ができるようになれば、いよいよ独り立ちの準備をはじめます。それぞれの技術や考え方に合った仕事を担当し、実践から働く喜びや楽しさを感じさせることが重要です。

  4. 4

    支援を減らし自立に導く

    先輩や上司は必要以上に口を出さず、自立して仕事ができるようになることが最終段階です。

従業員同士の結びつきをつくるコミュニティを形成する

現在の企業では、プライベートを大切にするあまり、人間関係は希薄になっていることも問題として挙げられます。しかし、徒弟的システムを活用するためには人と人のつながりが非常に重要。とある長寿企業では、入社から1年間は独身寮に住むというルールがあり、性別や国籍に関係なく2人部屋で生活し、年に数回の部屋替えを義務付けているそうです。またクラブ活動への参加を義務付けたり、全員参加の運動会や球技大会を開催したり、従業員の関係性構築に積極的な事例が多いのも長寿企業の特徴として挙げられます。

経費削減や効率化を考えれば、これらは時代に逆行しているように感じますが、現実として100年を超える企業で引き継がれている伝統でもあります。合理化という流れの中で日本が、日本人が、日本企業が失ってしまったかもしれないもの。100年を超える永きにわたり、荒波を乗り越え続けてきた先輩企業から今こそ学ぶべきではないでしょうか。

技能伝承」と「顧客満足向上」へ

ここまでは人材育成というテーマでお話してきましたが、その効果は企業発展へとつながっていきます。たとえば、独自の技術を将来につなげる「技能伝承」であり、企業経営で重要な「顧客満足度向上」もそのひとつです。

技能伝承

OJTでは上司や先輩を観察し、直接指導を受けることで自然と失敗や成功のプロセスを学ぶことができます。失敗や成功のプロセスを共有する「ナレッジマネジメント」がより自然な形で実現できるのです。ナレッジマネジメントは、「生産管理」「販売管理」「財務管理」「人的管理」「情報管理」に次ぐ、第6の管理領域としても注目が集まっています。

顧客満足度向上

組織体系を語るうえで忘れてはいけないのが、従業員満足「ES」と顧客満足「CS」という言葉。顧客満足は言うまでもありませんが、それを高めるうえで欠かせないのが従業員満足です。従業員満足なくして、顧客満足を高めることはできません。そのため多くの長寿企業では、「一人ひとりがプロとして仕事をする」「働くことに生きがいを持つ」といった企業理念を掲げて、それを体現する従業員を積極的に育てています。従業員満足を高めることで社内には活気が湧き、サービスが向上することで顧客満足度も比例して向上するのです。